――大人の哀愁と、仕事に残ったプライドと、静かな優しさ
ロバート・デ・ニーロ主演の映画『ミッドナイト・ラン』(1988年)。
この作品を若い頃に観たとき、多くの人は「テンポのいい逃走劇」「軽快なバディムービー」として楽しんだのではないでしょうか。
しかし50代になってから改めて観直すと、この映画はまったく違う表情を見せてくれます。
そこにあるのは、派手なアクションよりも、大人の哀愁。
そして、失いかけてもなお手放せない、仕事についてのプライド。
さらに、言葉にされないまま滲み出る、不器用な優しさです。
くたびれた男が背負う「過去」
デ・ニーロ演じるジャック・ウォルシュは、元刑事であり、現在は賞金稼ぎ。
正義のために働いていたはずの男が、今は金のために逃亡犯を追う――
この設定自体が、すでに強い哀愁を帯びています。
彼は口が悪く、愛想もない。
だがその態度の裏には、「過去に誇りを持っていた自分」と「今の現実」とのズレに対する苛立ちがあります。
50代になると、この感覚に覚えがある人は少なくないはずです。
かつては信じていた組織、理想としていた仕事。
それらがいつの間にか変質し、自分だけが取り残されたように感じる――
ジャックの疲れた背中は、そんな大人の現実を静かに映しています。
それでも捨てられない「仕事のプライド」
ジャックは決して完璧な男ではありません。
しかし彼には一本、譲れない線があります。
それが仕事についてのプライドです。
彼は「仕事は最後までやり遂げる」「約束は守る」という信念を持っている。
金のために働いていても、そこに手抜きはしない。
この姿勢があるからこそ、彼は完全に堕ちきることができないのです。
若い頃は「仕事=出世」「成功=評価」だったかもしれません。
しかし50代になると、仕事とは
「自分がどう在りたいかを守るための行為」
に変わっていきます。
ジャックのプライドは、まさにその象徴です。
派手さはないが、だからこそ胸に刺さる。
これは大人になった今だからこそ理解できる感情でしょう。
噛み合わない二人が生む「優しさ」
チャールズ・グローディン演じるデュークとの関係も、この映画の大きな魅力です。
正反対の性格で、価値観も合わない二人。
最初は互いに苛立ち、罵り合いながら旅を続けます。
しかし物語が進むにつれ、二人の間には奇妙な信頼が生まれていく。
それは友情というよりも、理解し合おうとする姿勢に近いものです。
ジャックは多くを語りません。
だが相手を守る行動、さりげない気遣いの中に、不器用な優しさが滲みます。
言葉で感情を表現しない世代の男だからこそ、その優しさは静かで、重みがある。
50代になると、人に対する優しさは「声高な正しさ」ではなく、
「相手の立場を黙って受け止めること」へと変わっていく。
この映画は、そのことを教えてくれます。
笑いの裏に残る、切なさ
『ミッドナイト・ラン』はコメディです。
テンポも良く、会話も軽快で、何度観ても楽しめる。
しかし笑いの奥には、確かな切なさがあります。
それは「人生は思い通りにならない」という現実。
それでも人は、誇りや優しさを失わずに生きていけるのか――
そんな問いが、観終わった後に静かに残ります。
若い頃には気づかなかった余韻。
それこそが、この映画が大人の映画である証拠でしょう。
50代の今、もう一度観てほしい一本
『ミッドナイト・ラン』は、
「かっこいいデ・ニーロ」を楽しむ映画であると同時に、
「くたびれた男の美学」を描いた作品でもあります。
仕事についてのプライドを失いかけたとき。
誰かに対して優しくなれなくなったとき。
ふと自分の人生を振り返りたくなった夜に。
この映画は、派手な答えをくれるわけではありません。
ただ、それでも大丈夫だと、静かに背中を押してくれます。
50代の今だからこそ、心に深く染みる一本です。
※ 次におすすめしたい映画
同じように、
「くたびれた男のプライド」や「言葉にしない優しさ」が胸に残る作品なら、次はこのあたりもおすすめです。
同じように、
「くたびれた男のプライド」や「言葉にしない優しさ」が胸に残る作品なら、次はこのあたりもおすすめです。
▶ リーサル・ウェポン
派手なアクションの裏にある「孤独」と「相棒への信頼」。
若い頃とはまったく違う見え方をする一本。
▶ ダーティハリー
正しさだけでは生きられない時代の男。
無骨な生き方が、今だからこそ心に残る。
u-next なら全シリーズ見放題です。
![[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。] [商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]](https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/507b19ea.e00b82ed.507b19eb.f51e1f76/?me_id=1206038&item_id=18489450&pc=https%3A%2F%2Faffiliate.rakuten.co.jp%2Fimg%2Fdefault_image.gif)


コメント